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2019/11/21 Category:ブログ

名護市役所

 

 

1981年に竣工した「名護市役所」です。

 

 

象設計集団の代表作であり、庁舎建築の名作として知られています。

 正直に言うと、あまりに異色ゆえ、

さほど興味を惹かれる建築ではありませんでした。

でもせっかく沖縄に来たのだから、

著名建築の一つとして立ち寄ってみることにしたのです。

当日はどんよりとした曇り空で、

沖縄の風景も重くくすんで見えました。

天気が良い日に見たかったな…と、

いまいち気分の乗らないまま現地へと向かいました。

 

庁舎に到着すると、天気なんてどうでもいいと言わんばかりに、

建物が放つインパクトは強烈なものでした。

 

 

 

竣工して40年近く経過しているため、

写真で見た記憶の庁舎よりも外壁の色落ちや劣化が見受けられましたが、

「アサギテラス」周辺の植物が建物を飲み込むかのように生い茂り、

古代文明遺跡の持つ怪しげな雰囲気に似た感覚を思い起こさせられました。

一瞬、現役の庁舎であることを忘れてしまうような錯覚に襲われます。

俄然興味を掻き立てられ、庁舎内をしばらく散策しました。

 

 

 

沖縄の地域性から生まれた土着的建築という認識はありましたが、

細部を見ていくと「なるほど」と納得する点が多く、

単なる奇をてらった”薄っぺら”な建築ではないことがよく分かりました。

 

 

まずファサード面に多用されている孔空きブロックは、

沖縄の一般建築によく見られる建材であり、

南国特有の暑さや湿気を逃がすための機能と

デザインを兼ねたものと考えられます。

 

 

 

 

 

軒の深い庇(パーゴラ?)は、当然強烈な日光を遮るためのものです。

秀逸なのは屋根材として用いられているブロックにおいて、

南面はブロックを縦使い、東面は横使いにして使い分けしている点です。

このように遮光を調整しているとは驚きでした。

 

また琉球ガラスを使っているかは不明ですが、

屋根に埋め込まれたカラフルなガラスブロックも印象的です。

 

 

土間コンクリートに埋め込んだ丸石や、歪な形のドア取手は、

実に工芸的で遊び心に溢れています。

 

 

 

一つ残念であったのは、今年の3月まで各柱の

持ち送り部に設置されていた56体の

シーサー像が見られなかったことです。

台風や塩害により落下事故が相次ぎ、

全て撤去されていたのです。

56名の作家が制作した個性的な56体のシーサー、

「56」という数字には56の集落が統合されて名護市が

発足した歴史的意味が込められており、

庁舎をシンボルとして市民に愛されていたに違いありません。

 

建築された背景を知れば知るほど、

名護市役所が名建築と言われる所以が理解できました。

 

今後も長く愛される庁舎として、後世に残して欲しいと願います。

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