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2019/11/27 Category:ブログ

聖クララ修道院

 

 

1958年に献堂された「聖クララ修道院(与那原カトリック教会)」です。

 

 

こちらはDOCOMOMO Japan(※)にも選定されています。

(※)・・・ドコモモとは「モダン・ムーブメントに関わる建物と

環境形成の記録調査および保存のための国際組織」

 

私は今回の沖縄訪問で存在を初めて知り、

ふらっと立ち寄ってみることにしました。

幹道から細い坂道に入り、小高い丘の中腹あたりに

ひっそりと修道院の入り口がありました。

あまりにも控えめな佇まいに、

車で乗り入れるのがためらわれる程でした。

手前の駐車スペースに車を停めると、

植栽の剪定をされている男性がいらっしゃたので、

「中を見させていただいても宜しいですか?」と尋ねると、

優しい沖縄訛りで「いいよー」と言って歓迎して下さいました。

 

 

聖クララ修道院へは南側からアプローチするのですが、

まず鉄筋コンクリート造の低層建築側面が視界に入ってきます。

聖堂の中央に向かって低くなる勾配がつけられた

「バタフライ屋根」も確認できます。

手前には聖母子像があり、穏やかな表情で出迎えてくれます。

西側へ回り込むと、象徴的な孔空きブロックの

ファサードを見ることが出来ます。

 

 

建物内に入ると、真っ白に塗装された壁や、

トイレ天井に設けられた天窓など、

非常にモダンにデザインされており、

外観との若干のギャップに少し戸惑いました。

 

 

聖堂に歩を進めると、一番のハイライトである

壁面のステンドグラスに目を奪われます。

リズミカルで鮮やかなステンドグラスを通して、

北側からの優しい光が差し込み、

何とも清々しい気持ちになりました。

北面に連なる跳ね出し窓は、全てモジュールが統一されており、

聖堂だけでなく、建物の随所で用いられています。

聖堂横には給湯室を兼ねた共用スペースがあり、

大きなイエス像が置かれています。

大きな開口と吹抜階段が効果的に用いられており、

大変開放的で明るく居心地の良い空間でした。

 

 

さらに聖堂に背を向けて奥へ進むと、

修道士が生活する修道院エリアです。

訪れた日には建物内に人影はなく、静けさの中の修道院内部が、

余計に厳粛な場の雰囲気を醸していました。

 

修道院エリアは中庭を囲った回廊型になっており、

南側に調理場、食堂、洗面・トイレ、洗濯室、シャワー室、会議室などがあり、

北側・東側には修道士が寝泊まりする個室が整然と並んでいます。

屋内は清掃が行き届いており、調理場の調理道具や、

物置内のモップなどから、かすかな生活感を感じ取ることが出来ました。

個人的には半地下にある洗濯室、シャワー室の薄暗さと、

ひんやりとした空気感が印象に残っています。

個室は最小限スペースで設計されていますが、

窓の配置など、美しくデザインされていました。

考えてみれば、こんなにもじっくりと修道院内を

見て回った経験がなく、何とも言えず新鮮な感覚でした。

 

 

後日改めて聖クララ修道院について調べてみると、

設計者・片岡献氏は当時在日米軍陸軍技術部隊建設部に所属しており、

沖縄の米軍基地建設に携わっていたアメリカの建築設計事務所

「スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリル(略称SOM)」

の協力を得て建築したとありました。

ある意味沖縄の歴史の上に生み出された建築と言えるかも知れません。

その歴史的背景も含めて、これからも大切に残して頂きたい建築です。

また沖縄に行くことがあれば、是非とも再訪したい場所の一つとなりました。                  

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